2009年度春山山スキー1

期間 3月20日(土)〜3月21日(日)
対象 あずまや高原ホテル駐車場登山口から四阿山
山域 志賀高原
メンバー (CL)前川、(SL)小林、小熊、斎藤、千葉コーチ、杵島先生(待機)

【コースタイム】
3月20日 晴れ 上田駅(8:30〜8:54)→あずまや高原ホテル駐車場登山口(9:32)→休憩(20分)→牧場有刺鉄線(10:50)→休憩(15分)→里宮周辺(12:30)

3月21日 曇りのち晴れのち雪 起床(4:00)→出発(7:40)→休憩(25分)→根子岳との分岐(10:00)→休憩(10分)→四阿山(10:40〜10:50)→根子岳との分岐(11:05〜11:10)→里宮(13:10〜14:00)→あずまや高原ホテル駐車場登山口(16:10)

【紀行・感想】
 当初、3月山行対象の第1候補に挙がっていた燧ケ岳はアクセス困難により変更を余儀なくされた。結果として選んだ四阿山には、ここ3、4年間の中で高校山岳部にとって3度目の挑戦となる。この山行は5月山行を見据えての準備に近い。心のどこかで1度は山頂を踏みたいと叫んでいた。

 3ヶ月ぶり、再び上田駅前のターミナルで上空を見上げる。晴れていて、寒くはない。先生にデポする荷物を預かっていただき、ジャンボタクシーで出発する。下界には雪が残っていないようだ。チェーンがなければ通行禁止とされていたはずの道路の脇には辛うじて雪が残っている程度だった。
 駐車場登山口から確かに雪が残っていたが、ところどころ残っていない部分もあった。15分ほど進んで林道途中の有刺鉄線との合流点に設けられた柵を乗り越えた。シールで歩き始めて20分後、牧場が一望できる場所に出たのだが、雪の少なさに驚かされた。一瞬、シールで歩くのに必要な雪がなく板を担いでトボトボ登る姿が頭をよぎる。しかしそれは有刺鉄線に沿って牧場の柵が見える所まで進み、雪がしっかり積もっていたのを見て、振り払うことができた。
 あとは柵沿いに歩くだけ。見落として通過してしまうことを心配していた里宮に予定より1時間早く着く。1日の行動にしては物足りないと思わずにはいられなかったが、この日はここで幕営。コーチと1年生がアイゼン歩行練習をしにテントを離れている間、Kが水用ブロックを切り出し始めていた。自分はそれを傍目に見ながら風速・温度計「スカイウォッチ」を弄んでいた。画面は3〜5m/s、−4℃を示していたと思う。
 夕食はビーフシチューペミカン。自分は調理の最後に鍋へビーフシチューの素を投入したが、不思議なことに油のベールに包まれて色が薄くぼやけて見える。味見で鍋の底からすくったスプーンにはギトギトの油が! 下界でペミカンに加えたラードは500gと、今までの900gより減らしたつもりだがそれでも多いことがわかった。茶色のものは底に沈み、スプーンの大部分を透明の液体が占めていた。味はどうかって? ここでは控えさせていただきますよ。油が多いだけならいいが水も多く入れたらしく、味が薄い上に油たっぷりのペミカンになってしまった。後は想像にお任せします。さらにそのペミカンを平気な顔をして食べるSの勢いの良さに驚かされた。(あとでトイレに何回か行っていた)
 夜中から早朝にかけては暴風がテントを打ちつけた。ペグで固定しているので飛ばされないとわかっていても不安を感じてしまう。
 21日朝6:00、ラーメンを食べてテントの外に出てみるが風は相変わらず強い。30分ごとに山頂の方向を見るが次第に視界が悪くなってきているようだった。テントを出て3回目のときだったろうか、風が弱まり雲の切れ間から一瞬青空が見えた。テントで横になっていた隊員を起こし、アタックをかけることを伝える。
 アタック開始後、初めは木と木の間を縫うように歩く。天候は回復していったが、分岐に近づくにつれ風は強くなる一方だった。出発から75分後、シールが利かなくなってきたのでシール歩行からアイゼン歩行に切り替えた。根子岳との分岐から10分後、山頂が見える所に辿り着く。空は曇っていたが、山頂は見える上に遠くの山容までも臨めた。山頂までは20分かかった。雪はガチガチでアイゼンの歯がサクッと食い込む。山頂からの帰り際に風速を計ってみると、なんと13,2m/sだった。
 板をデポした場所から滑降開始だ。自分だけがシールをはがして滑った。安全な滑降技術の一つ「横滑り」ができなければシールを外さずに滑ったほうがよいので、それぞれの最も滑りやすい方法で滑るよう指示した結果である。「横滑り」は文字通り板をそろえて体を進行方向の横に向けて滑る技術である。ビギナーが間隔の狭い樹林帯において、ボーゲンで木に激突しながら滑るよりは速いし安全なのがメリットだ。もしシールを付けていれば、滑り止めがかかるので滑りづらい。デメリットは比較的硬く締まった雪でないと滑れない、つまり重く緩い雪の上ではではボーゲンせざるを得ないということである。そして、シールを外していた自分はこのデメリットを知らず菅平牧場に出る際に痛い目に遭うこととなる。
 予想通り、皆テント場まで何回衝突したかわからないほど木に激突していた。さらに板が外れたり、赤旗が飛んで行ったりするところも見た。しかし、隊員全員がテントに着いてから時計を見ると13:10を指していた。前日の登りのスピードから考えて「今日中に帰ることができる」と判断した。さっそくテントを撤収して出発する。雪が降り出し、地面の雪は既に重く緩くなっていたが、この時点で横滑りのデメリットに気付くはずがなかった。
 牧場への出口の手前だったろうか、ハの字で狭いカーブにさしかかったところで細い木の根のアーチに板を通して転倒した。シールを外していたため勢いはよく、右足に激しく痛みが走った。あとでわかったのだが右足の足首から膝にかけて靭帯が緩んでいた。
 この転倒で初めて横滑りのデメリットに気付き、牧場の途中でシールを装着してから有刺鉄線と林道の合流点まで滑っていった。全員がホテル駐車場登山口に着いたのは16:10。2泊3日の行程を1泊2日で下山した雪山は初めてだが、スキーの効果が出たのではないだろうか。

(CL:前川耀平)